屋久島

境界の島々。前回は奄美大島を見ましたので

多くの生き物の境界線となる渡瀬線の北側の屋久島を見ていきましょう。

 

屋久島を捉える際に重要なのは、「渡瀬線を挟んだ琉球の南北方向への生物分布」と「島内の垂直方向への生物分布」だと思います。

この2つが相重なり、様々な奇跡を展開してきた島です。

この2つの要因を頭の片隅にいれ、屋久島を歩いて欲しいです。

 

つまり長い歴史の中で、島として切り離されてから起こる動植物の遺伝的な変化に加え、高山を有し多様な生息環境が存在することが、現在の屋久島を創造してきたのです。

 



(屋久島に架かる虹)

 

 

屋久島は世界自然遺産に登録され認知度の高い島かと思います。

私は2004年に屋久島の永田地区に長期滞在しウミガメの調査活動をしていました。

屋久島の永田浜は北太平洋一のウミガメの産卵地であり、調査のため夜の浜に行くとワンサカとウミガメが産卵のために上陸し、初めて見た感動は大きかったですが、飽きるほどウミガメの産卵を観察した場所でもあります・・・

私にとって、生き物や自然への興味を深めるきっかけとなった場所でマイルーツ的な特別な場所でもあります。

 

ウミガメにつては、ウミガメの解説ページがあります。




(アカウミガメの産卵)



(孵化したアカウミガメ 永田いなか浜)

 

 

さてまずは動物相についてですが、屋久島の動物相は九州とあまりかわりません。渡瀬線(トカラ海峡)があり南からの陸生生物の移動はありませんでした。しかし、氷期で海水面が下がった時は、おそらく九州と陸続きで九州の生き物が南下してくることができたのでしょう。南九州の生物相と類似しています。

 

ニホンザルやニホンジカ系のヤクザルやヤクジカ、イタチ等が生息します。奄美以南の島にはシカ(ケラマジカは移入種の可能性があるので私は自然界の生物分布を考える上では考慮しないことにしています)やサルは生息しませんし、イノシシもリュウキュウイノシシという本土のものとは少し違うものが生息します。

哺乳類については、屋久島-奄美間に明らかな差異を見ることができます。

 

 

 

次に植物相についてですが、屋久島の一番の魅力は植物の垂直分布が楽しめること。

垂直分布とは高度により、生えている植物が変化することで九州・沖縄で最高峰の宮之浦岳をはじめ標高1900mを越す山岳を有する屋久島では、海岸沿いでは亜熱帯の植物も観察できますし、縄文杉で有名な天然杉、さらには高山植物まで観察できます。

 

低地部の植物は緯度の割に亜熱帯の植物が見れます。これは黒潮の影響で暖かいことが一つの要因かもしれません。

 

一周道路を回ると、ガジュマルやヘゴをよく見ますし、安房には巨大マメを実らすモダマがあり、栗生川河口にはマングローブの一つメヒルギも生えています。谷にはオオタニワタリやクワズイモ等も多く亜熱帯を十分に感じれます。

南から海流に乗って流れついた種が、意外に暖かいので生育できたのかもしれませんね

 

 



 

500m付近では常緑広葉樹林となります。

 

これは南九州と同じような森です。

 

 

 

 


さらに1000m付近では天然の杉が見えてきます。

 

杉の花粉の化石は沖縄島でも出土していますが、現在は屋久島より南に自生はしていません。そう考えると、昔は沖縄も2000mを越す山があったのかもしれませんね~

 



 

 

 

さらに、高度をあげると、植物にとって厳しい生育環境となり矮性化(大きく育たない)する。山頂付近はヤクザサに覆われた場所が多くなる。花崗岩が露出しているのも特徴的である。

 

 

 

 

 

 

こういった、垂直方向に気温の低減に伴い、植物が変化する様子は、森林生態を見つめる上で非常に重要です。屋久島ではこの垂直分布が非常に分かりやすく生物の教科書に載っているようなことをリアルに捉えることができます。

 

生物の生息環境を育む森林環境をしっかり捉えることで、生物相に対する見解がグッと広がります。

 

 

 

屋久島より南の琉球諸島には低い山しかなく、一般に垂直分布は捉えにくいですが低い山にも垂直な生物分布は存在します。

 

 

 

島という狭い範囲で、潮風や季節風等の海岸性気候や台風等の集中豪雨が作りだす複雑な谷地形が植物の生育に大きく影響し、環境要因に起因するベールの中に隠れてしまい垂直分布が屋久島ほど如実に現れないのは確かです。

 

 

 

しかしながら、大きなシダやヤシが林内に生い茂る亜熱帯性の森林の中にも垂直方向への変化は存在します。

 

 

 

複雑な環境要因に覆い隠されたその垂直への変化をしっかり捉えれば、琉球の山林をより深く知ることができます。

 

 

 

山林を知れば、山林から流れ出す土砂が作る干潟や平地、そして海域へと想像は膨らむことでしょう。

 

 

 

列島の自然科学をより多面的な視点から見つめていくためにも、屋久島の自然環境を捉えることは非常に意味があると思います。琉球の自然や生き物を考える上で変化点でもあり、非常に重要なキーポイントであり、比較することでなお一層琉球列島が楽しくなります。

 

 

 

 

 

行ったことがない方にはぜひオススメします

 

屋久島を知れば琉球列島がさらに見えてきます。