琉球生態系の特徴(アカマタの行動を例に考える)

こちらは夏季に、ウミガメの産卵場所付近で観察したアカマタ(中琉球の固有種)。


(2013.8.12久米島アーラ浜)


(2013.8.26久米島アーラ浜)

昨年は度々、ウミガメ類の卵又は幼体を捕食するために砂浜を徘徊しているのであろうアカマタに遭遇しました。

この、アカマタの餌食行動は実に興味深いです。

太田ら(2000年)が行った屋我比島での調査ではアカマタが移動しながら見つけたウミガメを捕食するだけでなく、海に向かうルートで待ち伏せしながら補食する行動も観察されています。

ヘビが普通にウミガメ類の卵や孵化幼体を捕食することは世界的にも例が少ないようで、又、肉食の爬虫類が待ち伏せ型の補食行動をとるのも極めて珍しいようです。

琉球諸島に生息する生物は、他地域であまり見られない行動や食性をすることが確認されており、各生物種のニッチが広いとされています。このアカマタの行動もその一例なのかもしれません。

ニッチとは生態系における各生物の役割のことで、例えば、「植物が光合成を行い有機物をもたらす。」「草食動物が草を食べ、肉食動物がその草食動物を食べる」など生態系を成り立たす各生物の役割のことです。

琉球諸島は生態系を構成する生物相が他の地域にくらべやや特殊であるため、それぞれの生物の担うニッチも少し特殊だと考えられます。

分かりやすい例としては哺乳類だと思います。
琉球諸島の生態系の構造を考えたとき、豊富な植物相や昆虫類相、爬虫類相に比べ哺乳類相が著しく乏しいです。大きな哺乳類といえばリュウキュウイノシシしかいないし、肉食哺乳類はイリオモテヤマネコしかいません。

つまり、一般的な食物連鎖ピラミッドの頂点にくる肉食獣がいないので、本来肉食獣が担うべきニッチに空白ができるため、他の生物がニッチを広げその空白部分の役割も担うようになり、他の地域では見られない行動や食性をするのです。

琉球諸島唯一の肉食獣イリオモテヤマネコの食性も他のヤマネコ類とは大きく異なりオオコウモリを主食としながら昆虫類や爬虫類など幅広い食性をすることが知られています。
これはツシマヤマネコや海外のヤマネコ類が小型哺乳類を主に食すのと明らかな食性の違いがあります。

一般に、琉球諸島のような狭い島環境下では肉食獣を支えれる生態系構造が成り立ちませんが、ニッチを広げることでイリオモテヤマネコは島の生態系の中で生き延びてきたと解することができます。

過去の化石からも鹿や象など大型の哺乳動物が琉球列島にもいたことが知られていますが、それらは絶滅し、島の生態系に適応できた生き物のみが現存しているのでしょう。そして、それらは島の生態系の中で生き抜く術を持っているのです。

生態系の階層構造の中で、ある階層の生き物が著しく少ない場合は、他地域の生態系の同階層の生物種より多様な行動を行える空白のニッチが存在するのです。

従って、琉球諸島の現存の生き物を観察することは生物学的に奇怪な光景を目の当たりにできる可能性を秘めています。


(参考文献)
太田秀利、森哲2000年「カメを食うヘビ慶良間列島、屋嘉比島のアカマタ」みどりいし11号 P 5-7
西表野生生物保護センターWEBサイトhttp://iwcc.a.la9.jp/ym_about.hthttp://iwcc.a.la9.jp/ym_about.htm
2013年12月参照