ノッチ

写真のように岩が窪んだ地形をノッチといい、波の侵食や海水の溶食作用によってできるもので、石灰岩の海岸では多く観察できる。

久米島の海岸でも観察できるので、ぜひ目を向けて欲しい。


●ノッチの成因

 ノッチを形成する作用としては「波のエネルギーによる侵食」「化学的な溶食」「生物侵食」などが大きな要因だと考えられている。

「波のエネルギーによる侵食」
万座毛
万座毛

波による物理的なエネルギーによる侵食。

同じ場所に、エネルギーがかかるような場合、顕著に侵食を受ける。

景勝地として有名な沖縄県恩納村の万座毛は波による侵食を受けたと考えられている。


「化学的な溶食」
鍾乳洞
鍾乳洞

 石灰岩の成分には炭酸カルシウムが多く含まれている。

 炭酸カルシウムは水と二酸化炭素と化学反応を起こし溶かされる。陸上ではこの作用により鍾乳洞が形成される。

 海水中では、岩についている生物等の呼吸作用等により炭酸ガスが生じるので、石灰岩の溶食が起こりやすくなることが考えられる。

 


「生物侵食」
オニヒザラガイ
オニヒザラガイ

生物が岩を削る場合もある、例としてはヒザラガイが挙げられる。

ヒザラガイはある一定の場所を削りそこでじっとしており、引き潮時に海藻などを食べに出歩くという生活をしているらしい。岩着の藻類を食べる際も少しずつ岩を削るという。

また、岩に付着した貝や藻類が呼吸、光合成を行うことでphや炭酸ガスの濃度が変化するので間接的に化学的な溶食作用を促していることも考えられる。


●琉球諸島のノッチの浸食面の高さ

 海水面付近で起こる様々な事象より形成されるノッチだが、琉球では海水面より高い位置に形成されることが多い。

 貿易風帯の風下側の海岸など穏やかな海の場合は最後退点(最も浸食される場所)は平均海水面付近にくるが、琉球は夏は南風、冬は北風が吹き年中穏やかな海岸が少ない。そのため琉球のノッチの最後退点は平均海水面より高い位置となるに形成される場合が多い。

※平均海水面とは干満により上下に変化する海水面の平均となる海水面。

貿易風帯の風下側のノッチ
貿易風帯の風下側のノッチ
琉球(季節風帯)で見られるノッチ
琉球(季節風帯)で見られるノッチ

●ノッチの高さから分かること

久米島清水小学校前海岸の2重ノッチ
久米島清水小学校前海岸の2重ノッチ
離水ノッチと現生ノッチ
離水ノッチと現生ノッチ

 平均海水面付近(あるいは平均海水面の上部)で形成されるノッチだが、場所によってはノッチが形成される高さより高い位置でノッチを観察することがある。このノッチを離水ノッチといい、過去に形成されたノッチである。これに対して平均海水面付近で現在進行系で浸食されているものを現生ノッチという。

 離水ノッチと現生ノッチの高さの違いが何を物語っているかというと、「過去と現在で海水面が高さが異なる」ということである。つまり、過去から現在にかけて海水面の高さが下がった、あるいは、陸が隆起したことを意味するのである。

 

 この例として、久米島の清水小学校前の海岸に離水ノッチと現生ノッチを同時に観察できる場所がある。

 離水ノッチは縄文時代に形成されたものと考えられており当時は現在より海水面が約1.8m高かったことが分かる。

 

 また、同じ時代に作られたノッチでも場所によって高さが異なる場合がある。基本的に海水面の高さはどこでも同じなので、これは地殻の変動によりその土地の高さが変化したことを示す。