奄美大島

生物分布の境界線の南北で生き物や自然環境がどのように異なるのか見るには、渡瀬線の南北で比較的大きな島である奄美大島と屋久島を見るのがよいでしょう。



(琉球列島の生物区)

 

 

今回は奄美大島についてです。

 

 

私がはじめて奄美大島を訪れたのは、学生時代に南西諸島の全ての島を自転車で回ろうと思って度をしていた時です。南の島は平坦だと勝手な偏見を持って訪れ、アップダウンのキツさに四苦八苦したのを覚えています。

以後、数年に一回は訪れているお気に入りの島です。

 

 

琉球列島を考える上で、奄美大島の意義は大きいと捉えております。

屋久島と奄美大島の間に生物分布上の旧北区と東洋区の境界線があるため、奄美大島を北限とする動植物が非常に多いです。奄美大島~屋久島間には大きな島はなく旧北区と東洋区の境目、すなわち中琉球と北琉球の境目を捉える上で一つのモデル的な場所だと思います。

 

実際に、奄美と屋久島の違いを体感した時、列島への興味が加速的に高まりました。私自身にとっても重要な島でした。

 

奄美大島と北琉球との景観の違いは一目で分かり。奄美は多くの方がイメージする沖縄的な景観です。

植物相はやんばる(沖縄島北部)に類似しており、アダンやモンパノキ等の海岸林やヒカゲヘゴがニョキッと顔を出す常緑広葉樹林があります。

 

 

沖縄島~奄美大島は近い過去まで陸続きであり、琉球列島の中で一番歴史の古い島であるため、他地域には類を見ない生き物も多いです。

特に有名なレア生き物が、アマミノクロウサギ、アマミトゲネズミではないでしょうか。

奄美大島、徳之島のアマミノクロウサギは、氷河期の前に大陸から移動してきた古いタイプのウサギで氷河期を奄美で生き延びた生き物です。奄美大島、徳之島アマミトゲネズミは沖縄島のオキナワトゲネズミの亜種に分類されていますが、近い種類のネズミはスマトラ島などにしか生息せず、遥か昔に南方から入ってきたものが生き延びたのでしょう。

その他にも、ルリカケスやオオトラツグミ、オットンガエル等の固有種も多いです。

 

 

奄美大島でこのような生き物たちが生き残れたか考えると、島の規模が大きく、山地や干潟、平地等の多様な環境があったからかと思います。

奄美大島を1周ドライブしてみるとその広さに気づくと思います。沖縄島の2/3の面積です。

沖縄島より幅があるため、山が深く、また入り組んだ地形である印象を受けました。

最高峰も700m近くあり、中琉球、南琉球の中では一番高く、奄美の高地にしか生育しない植物もあります。

北の平地は平らな地形で造礁サンゴの作る海岸地形が美しいです。一方島の大部分は複雑な山々からなる森林地帯が広がっています。住用には日本では西表島に次ぐ面積のマングローブ林があり、この多様なフィールドこそ奄美大島の魅力であり、多くの神秘を育んできました。


 

久米島のシーカヤックツアー&紅型屋さんのブログ

(独特の複雑な地形)

 



 

地形的に非常に面白く、フィールドを歩くと地球でもここにしかいない生き物が生き残れたのがうなずけます。

しかし、開発や人の手が入っているのも感じ、多くの林道が整備され、また、集落に面した側の山腹面はリュウキュウマツ林にが多く人工的な森林整備を感じます。近年はマツクイムシの影響で立枯れしたマツ林が目立ち、「よくこの島にクロウサギが生きれるなあ」と思う瞬間もあります。


 

昨年訪れた時は、近年の豪雨災害でそこら中の山が崩壊していました。

広い森林の中で一部が崩れるというのは、多様な生態系を作る源だと考えています。山が崩れることで、新しい山が作られます。

長い歴史の中で繰り返し起こり、奄美独特の複雑な地形と森林環境を作ったと思います。

太古の生き物たちもその中で生き延びてきたのです。

 

 

私は、奄美大島から多くことを学びました。

琉球列島を見つめて行く上で変化点として、奄美大島は非常に重要かと思います。

 

長い歴史を生き続けた生き物達が今も生息する複雑な山々は列島の中でも有数の奥ゆかしさを持っております。

ただ、久米島もそうですが、中琉球の山のある島はハブがいるのが難点です。

ハブに注意しながら、奄美の藪をかき分けてみて下さい。

太古からの夢が息吹いております