谷について

 

「谷」それは自然を捉える上で非常に重要なものです。

谷はその地域の植生を知る上で重要な手掛かりを秘めているだけではなく、複雑な地形を有する琉球諸島の山林地形の中で唯一の突破口が谷であり、谷を捉えることができないならば、琉球列島の未開に到達することはできません。多くの生き物とも出会えないですし、手付かずの琉球の大自然を見ることは難しいと思います。

 

私は、列島の谷を歩いてきましたが、他の琉球諸島と久米島の植物相の違いを谷の中に見出しました。

その違いの要因が何かはまだ捉えきれていないことに、もどかしさを感じていますが、今後のフィールドワークの大きな課題だと思っています。

 

本題に入る前に、今回はまず「谷」ってなんなのか?そして、「谷」が果敢な大自然に挑む唯一の突破口である!!そんなお話をさせて頂きたい。

 

それでは、まずは、谷を捉えていきましょう。

地形を把握する場合に特に留意して欲しいのが谷と尾根、そしてそこに連動する雨水の動きです。

谷には雨水が集まり沢となります。

沢が支流となり、本流へと注ぎます。この水の集まり全体を水系といいます。

水生生物を捉える際にもこの水系の概念が重要になりますが、これについては別の機会に述べます。

 

下の立体写真を見て下さい。



 

凹んでいるところが谷、凸でるところが尾根です。

青い尾根線は一番高いところになるので、青で囲まれた部分に降る雨は谷に流れていきます。

イメージが沸くでしょうか??

 

 

次にこれを地形図で見た場合、谷と尾根読めますか??

 



 

 

赤い尾根線が凸部分で、尾根線と尾根線の間の雨水は表面を流れ谷に集まります。

いくつかの谷が一つの谷にあつまります。すると流量が増え沢を形成します。

 

この雨水が集まる面積を集水面積といい、集水面積が広いと谷部分の水の量が多くなり常に水が流れる沢となります。

 

 

沢になっているということは、水が流れるため植物に覆われていないため歩きやすい道となります。ですから、低木や亜高木が密生する亜熱帯性の森林の中で唯一進める道が「谷」なのです。


久米島のシーカヤックツアー&紅型屋さんのブログ
(森の中でも水が流れる場所は植物が生えない=突破口になる)

 




 

私のフィールドワークスタイルは、谷を詰めて森林の奥地に行き、日が暮れそうになったら違う谷を降り安全な浜で夜を凌ぎ、また翌日、谷を詰める・・・この繰り返しで琉球の未開にアプローチしていきます。



(相棒と谷を詰める)

 



(日没までに谷を降り、浜にでる)

 



(谷に沈む夕日、浜で夜を凌ぐ)

 

 

琉球諸島の中で山があるという島にはかなり有効な歩き方だと確信しています。


琉球の自然を見たいのであれば地形図から谷を拾い、集水面積を踏まえ植生状況を把握すれば自ずとルートを見いだせます。

 

(相棒と谷線を拾いルートを決めている様子。写真の2Lの烏龍茶を一夜で飲み干すくらい白熱する)

集水面積は谷の水量を表し、表面を流れる水が常時あれば植物は生育しません。枯れ沢であっても流れる頻度が多ければ、洪水の度に表面の土が移動しますので植物は生育しにくいです。頻度によりコケ→シダ→樹木といったように植生が変化します。すなわち、水が流れる谷ほど歩きやすい、密林の中の唯一の突破口となるのです。



(シダが生い茂る谷を詰める)

 

もちろん、多すぎると、川が大きくなり水深が深くなりますが、琉球列島のような小振りな山々が複雑に絡みうあう地形の場合、個々の水系の集水面積が小さく河口部以外では進めないほど大きな渓流は形成しません。

 

また深いところは泳げばいいだけの話です。幸いなことに琉球にはワニゲーターやピラニアなど危険な生き物がいませんので、水の中はガツガツ進んで問題ありません。



(河口部を渡る。もちろん、ワニゲータはいない。)

 

集水面積の小さな谷は枯れ沢になっており、河口から沢を遡ると上流部の支流などは雨のあとしか水が流れない枯れ沢になっています。

 

枯れ沢は、ハードな藪漕ぎを強いられます。草木が生い茂り藪をかき分けながら進みます。

 

(小径木が生い茂る枯れ沢)

 

感覚的なアドバイスとしては国土地理院が発刊している1/2500地形図において、細い線で川が記されている場所は間違いなく容易に進むことができます。



谷を詰めていけば迷うことはありません。

ただし、滝や崖にぶつかる場合はあります。



(滝にぶつかる)

 

しかし、絶対に琉球に越えれない滝はありません。なぜならば、琉球の山は崩れやすく、台風等の集中豪雨により頻繁に表層崩壊を起こし、稜線沿いに無数の小さな谷が作られます、小さな谷を登れば必ず迂回路があります。

 

地形図等では拾えきれない小さな谷は、地形と植生を見ながら現地で見つけていくしかありません。

 

これを見つければ、絶対に迂回できます!!信じて下さい。そして、忘れないで下さい。最後まで夢を信じた者だけが楽園にたどり着けることを!!

 

 

ですので、登れない滝にぶつかったら、少し沢をもどり両岸の迂回路を探して下さい。

迂回路を登る際には、密生した樹木がつかみやすく、時につる性の植物がロープ替わりになります。



(迂回路を登る

 

ちなみに、ザイルワークさえ身につければ琉球に登れない滝はありません。

私は若いころは、地形判読能力が低く、滝にぶつかるとすべて直登していました。確かに、この方法でも谷を詰め切り楽園にたどり着くことは可能ですが、おすすめしません。

大幅な、体力、時間のロスになるし、命がいくつあっても足りません。

 

 

(滝を直登する)

 

 

このように、山林の奥地へ行く突破口です。

 

手付かずの自然を知るためには「谷」からのアプローチをおすすめします。

 

しっかり「谷」を捉えていきましょ~

 

そして、「谷」は浜から山奥に行ける突破口だとお話しましたが。これは、「谷」が山奥~海域につながる自然の道であることを示し、島の自然環境をつなぐ役割も果たしています。

島全体の生態系を捉えたいなら、「谷」は重要な存在で絶対に目を背けてははなりません。