サンゴの白化状況(2016.8.20)

今年は沖縄地方に台風が全く来ないせいか、沿岸の海水温も上がっております。

 

そのためか、サンゴの白化現象が顕著です。

 

サンゴは色素を持つ褐虫藻という藻類と共生しており、この共生藻類の光合成によりエネルギーの多くを得ています。また、共生藻類の吸収する光の質により色とりどりにサンゴが見えています。

 

白化現象とは、環境の変化などのストレスにより共生藻類がサンゴから離れてしまう現象で、高水温や酸性化、海の濁りなどにより光合成を行いにくい環境になった際に起こると考えられます。

 

白化すると、共生藻類が無くなるので、サンゴの骨格の色がそのまま見えます。

 

真っ白な骨格がみえているものもあれば、サンゴ自体がもつきれいな蛍光色をはっきり観察できるものも多くあります。

 

一見綺麗に見えますが、エネルギー供給源である共生藻類の密度が低下しため淡い色や白色を呈している訳ですから、あまりこの状況が長続きすると、サンゴの生育上あまりよくないのは明白です。

アーラ浜沖合のサンゴ礁の状況を、新旧比べてみますと・・・

 

こちらが、今年の7月上旬までの状況です。

↓が、8/20に撮影した近辺の海域です。

ほとんどのサンゴから濃い色は抜け、淡い色や白くなっているのが分かります。

 

さらに海面から観察すると顕著に分かります。

このままの状況が続くとこの海域のサンゴは大ダメージをくらいそうですね。

 

美しいものが朽ちていく光景を見届けるのは心が痛い部分もありますが、こういった攪乱現象が一つの自然の摂理であることもしっかり踏まえた上でフィールドを見ていく必要性も感じます。

 

山崩れにより新たな森が構築されるのと同じように、大規模なサンゴの死滅も造礁のメカニズムにおいては何十年かに一回は起こった方がむしろ健全なのだろうし、攪乱により競争が緩和されることで分布を拡大できる攪乱依存型のサンゴもきっといるのだと思う。

 

長い歴史の中では、何度も起こってきたことだろうし、ここで起こり得る世代交代的なものが種の繁栄をもたらし、造礁というサンゴがもたらす浅海地形の構築がこの琉球諸島を成り立たせてきたという側面も重要だと思う一方、攪乱の頻度や強度に人的要因が大きく影響している可能性も深刻です。

 

どこまで影響しているものなのかはよく分かりませんが、地球温暖化や都心部でのヒートアイランド現象などは大きく影響しているものと思われます。

人的要因が無ければ100年に1回頻度の自然現象が10年単位で起こっているのかもしれません。

 

我々がフィールドを見届けることができる期間はせいぜい60年程度であり、長い歴史の中ではごくごく一瞬しか見れません。視点をダイナミックにすればするほど捉えることができる事象はちっぽけになっていきます。

 

今からこのフィールドで起こる変遷の中で、多くのことが垣間見えると思います。

今を生きる我々が取り組める地球科学というのは、目の前で起こり得る変化や事象をヒントに今地球規模で何が起こっているのか妄想していくことだけなのかもしれません。

 

・・・ちょっと思想的になってまいましたが、

 

久米島沿岸のサンゴ礁はサンゴの大きさなどから、壊滅状態からここ10~20年くらいで著しく成長してきたサンゴ礁だと考えられます。

おそらくサンゴの生育にはよい条件なのだと思われますので、ここで壊滅しても高スピードで変遷していくことが期待できますので、2次遷移の初期を目の当たりにする際に何をどう捉えるべきかをしっかり考えながらフィールドに赴くという作業が大事だと考えています。

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コメント: 2
  • #1

    アンダゴ (水曜日, 24 8月 2016 20:43)

    いつも大変勉強になる記事を拝見しております。沖縄本島真栄田岬や、裏ビーチも白化がかなり進んでおります。また、焚き火を囲いながらお話聞かせてください。

  • #2

    あおしょうびん (水曜日, 24 8月 2016 23:45)

    たき火囲んで夢でも語らいたいものですな~